【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

23.金糸雀は空を羽ばたく - 如月 -



光輝と一緒に生活する時間は楽しくて
年末まであっという間だった。


年始早々、
アタシは不思議な体験をした。



同じマンションにいる
小さなお子さんが近づいてきて、

「ねぇねぇ、いつうまれてくるの?
 ぼくがいっしょにあそんであげるね」

そう言って、
お母さんの声がした方へと走り去っていった。



えっ?
何時生まれてくるの?って何?



そう思いながら、
スマホの手帳で生理の予定日を確認する。

前回の生理から……。


自分の周期を計算したうえで予定日を確認すると、
すでに一週間以上、遅れていることに気が付いた。


まさか?


だって、久しぶりに慣れないストリートライブを路上や公園で楽しんで、
おじちゃんや、おばちゃんのお店に手伝いにいって、
星奈や陽奈と映画を見に行って、クリスマスパーティーをして、
夜は夜で光輝とのひと時を楽しんでた。



赤ちゃんが生まれるようなことをしていた自覚はあるけど、
こんなに早く?


ただ疲れているだけだよ。
そんな風に自分に言い聞かせてた。



年が明けたら今度は、
一族や会社関係者へのお披露目の為の披露宴の準備が待ってる。


その為に今から招待者をリストアップする作業もあって、
私の実家やお義父さんお義母さんの所へとお邪魔したりと慌ただしかったから。



疲れてるだけ……って思ってたのに。



そのまま、なんとなく薬局へ出掛けて、
妊娠検査薬をかってトイレにこもって検査してみる。



陽性を示した筋が入り、
アタシはへなへなとその場へと座り込んだ。



嬉しいんだよ。

嬉しい反面、
その瞬間があまりにも突然すぎて。



三橋は凄く喜んでくれて、
戻られた旦那様にご報告ですねってっと嬉しそうに微笑んでくれる。


だけどアタシは、やっぱり怖くて……。


情けないなー。


そう思って、アタシは気を紛らわすように、
ギターを片手につま弾きながら、
新しい曲作りを手掛けていた。

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