【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

「うんうん。

 凄くいいと思うし、音楽活動やりやすくなるかも。

 どうせなら、チケット制とかで高すぎるとアタシたちも払えないけど、
 僅かだったら土地使用料をとってもいんじゃないかな。

 そのかわりにブースみたいな感じで、
 アーティストごとにスペースと日にちを指定してさ。

 ストリートライブのお知らせ板とかもあって、
 そこに次回の予定を貼っていくことが出来るとか」


そう言って如月は凄く嬉しそうに
自分の思ってるイメージを語り始めた。


それらの想いをベースに、
如月への俺からのプレゼント構想が脳内で描かれていく。



今、候補に浮かんでいる緑地公園を時間指定して、
音楽パークにしてしまうことが出来れば
少しは未来の文化保護の手助けが出来るのではないか……。


そしてその音楽パークを、
俺たちの仲間が関係している何処かの音楽事務所と提携することが可能になれば、
そこから未来の扉が開くこともあるのかもしれない。



そんなことを思いながら、
俺はスマホを取り出して関係各所にその場で連絡をしていた。



突然、無心に動き出した俺に、
如月は驚いたような表情を浮かべながら笑ってた。




「如月、大丈夫。

 近いうちにプロジェクトは動き出すよ。

 そしたら如月は、その場所で今度は堂々と歌ってよ。
 俺は一番近くで楽しませて貰うから」




その日から、
俺は如月の為のプロジェクトを自身の仕事と同時に進行し始めた。


時折、残業になることもあったけど、
それでも夜中にはどんなに遅くなっても如月の待つ自宅へと帰る。



そして如月からパワーを貰う、
そんな繰り返し。


オフの日は、如月と共に三杉のリゾート地へと足を運んで、
その場所でのんびりと芝生の上に座ったり寝そべったりしながら、
ギターを奏で柔らかに歌う如月を見つめて過ごす。


そして時折、
スイッチが入った時はお互いを求めあう営みの時間。



そんなある日、
仕事から戻った俺に告げた。



『ねぇ、光輝。
 ここにアタシと光輝の新しい命が居るんだって』



そう言って笑った如月を、
ギュッと抱きしめた。



「如月、歌って」



幸せを告げるメロディーが、
俺たちを包み込んでいく。





この笑顔を新しい家族を守るためにも、
俺は今以上に、
頑張っていきたいと心の中で決意した。

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