【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

エピローグ


「あらあらっ。
 奥様、お坊ちゃまが……」


三橋の声に慌ててアタシは産婦人科で出会ったママ共に教えて貰った、
完成したてのおしっこキャップを手に、
輝真【あきまさ】と光輝と二人で名付けた息子の元へと駆け寄り、
立派な噴水を覆い隠すように被せた。


「ふふふっ。
 今はこんなものがあるのですねー」

「そう。
 昨日、待合室で教えて貰ったの。
 でも、アタシ裁縫苦手だから手こずっちゃった」

そう言って三橋に笑いかけると、
三橋も柔らかに微笑み返してくれた。


おむつを手早く交換して輝真を抱き上げると、
アタシは抱っこしながら、
家の中をブラブラとリズミカルに歩いていく。


妊娠がわかってからの光輝は前以上にアタシにべったりで、
健診の度に付き添ってくれた。


妊娠後期になりそうな夏頃に一族へのお披露目が予定されていた当初より、
二ヶ月ほど早い妊娠中期に、大披露宴の予定は変更された。


妊娠してしまったアタシには、
当初の結婚式のウェディングドレスを着ることが出来なくなり、
新たに姫龍さんデザインの新作着物と新作ドレスで披露宴に臨んだ。


その最中も、倒れないようにと看護スタッフがつきっきりで介添え役を担ってくれて、
安心して大役を終えることが出来た。



そして二週間前にに生まれた我が子は、
光輝の『輝』と真梛斗の『真』を貰って、【あきまさ】と名付けた。


光輝は私の「月」の字を使った名前にしたかったみたいなんだけど、
考えても考えても、アタシの漢字と光輝の漢字、
そして真梛斗の文字を使った名前なんて思い浮かばなくて。

あっ、これいいかもって思って姓名判断なんてしてみた暁には、
大凶って幸先不安なことが書かれてて。

なんとか辿り着いた名前が輝真だった。


ようやくママ業にも、
三橋の力をかりながら慣れ始めたアタシ。

< 111 / 115 >

この作品をシェア

pagetop