【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

「ごめんっ。澪、ごめんってば。
 ちょっとアタシ、訳ありなんだよ。今。

 この間、ばーばの法事に実家帰るって話したじゃない。
 その日、実家に拘束されて、そのまま翌日、お見合い。

 それで今は婚姻届も書かされて、今はその人の家で暮らしてる」


その発言をした途端に、澪は黙りこんだままアタシの方を見る。



「キサが結婚?お見合い?えっ?。
 ごめんっ。あっ、おめでとう。びっくりして、お祝いの言葉すぐに出てこなかったよ」


そう言ってる澪の顔からは、『えっ?キサ、真梛斗君は吹っ切れたの?』っと言葉にしないまま、
表情が物語ってる。


「澪、驚いてる?
 アタシもさ、驚いてるんだけどさ。

 相手、アタシの出身校の雲上人なんだわ。
 笑うでしょ。

 このアタシが、三杉財閥の御曹司と一緒に暮らしてるんだから」

「えっ……。みっ、三杉財閥ってあの……双子がいるところ?」

「そう。
 三杉光輝と三杉竣佑。あの双子がいるところ」

「んで、キサの旦那は?」

「光輝。双子の兄貴の方」

「うわぁ、玉の輿じゃん。

 キサがフリーだから、今はまだ彼氏なんていらないやーって思ってたけど、
 私も焦ってきた。

 キサ、いい人紹介してよ」



その後も、澪はアタシの結婚をお祝いしてくれる。


一時間近く澪との会話を楽しんだ後、澪はバイト先へと向かった。
一人になったアタシは、また引きずる。


澪か悪気がないってわかってる。
そういう風に振舞ったのはアタシ自身。


だけど……心は澪に、攻めて欲しくて溜まらない。




キサ、真梛斗が死んだからって、
すぐに次の男なんて最低だって。



罵って軽蔑して、どん底まで突き落として貰えたら、
どんなに楽だったかなー。


そんな風に思ってしまうアタシ自身が、
一番、ヤバイってことも知ってるのに。

それすらも制御できずに持て余してる。



そして真梛斗のことしか考えたくないアタシでいたはずなのに、
僅か数日、暮らしただけなのに、アタシの中に光輝さんが存在し始めてる現実。


毎日、同じベッドで眠る時間。
朝御飯、お買い物、外食。

ここ数日の間でも、いろんな時間があった。

別になんてことないって、割り切ってるはずなのに、
息苦しく感じる自分も存在して、自分が許せなくなる。

光輝さんと過ごし始める時間が、真梛斗との大切な時間を蝕んでいくみたいで。


まだ光輝さんと暮らすマンションに帰る気になれなくて、
お詫びを兼ねてヨシさんとハツさんがしているバイト先へと和菓子を手土産に向かった。


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