【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


「一綺からの連絡で、如月が保護されたみたいだ。
 今は神前悧羅の大学病院で二人の伯父さんの世話になっているみたいだ」

「見つかってよかったな」


そう言った聖仁は、
車がホテルに滑り込んだのを確認するとすぐに
ビジネスモードへと表情を切り替えた。


「荷物をまとめてすぐに戻ります。
 どこかで待機を」


運転手に告げて、
俺はホテルのエントランスへと入るとすぐに最上階へと向かう。


聖仁もまたホテル内に手配している自分の部屋で荷物をまとめると、
俺の部屋へと入室してきた。


荷物と言っても、殆どがホテルの備品を使っていたために、
俺自身のものと言えば着替えくらいだ。


それらをスーツケースに詰め込むと、
パスポートを確認してそのままスーツケースを転がしてホテルの部屋を後にする。

部屋の前ではベルマンが待機していて、
俺と聖仁の荷物をすぐに車へと運んでくれる。


すかさずフロントでチェックアウトを行うと、
ホテルの関係者たちによって送り出される。


彼らの仕事を労いながらホテルを後にして、
目指すのは空港。


空港に着いたら専用ゲートから手荷物を預け出国審査と税関を通過して、
飛行機が待つ場所へと案内された。

飛行機までの移動中に、一綺の元へと連絡を入れる。



「もしもし」


「一綺、今からこっちを出る。

 今からのフライトだと、
 日本に着くのは時差があるから0時前だろうか」

「了解。
 こっちは任せて」

「頼む」
「日本に着くころに、そっちに迎えに行くよ。
 その後、病院に案内する。
 時間外だから、身内が居るほうがそっちも安心だろう」


そう言うと一綺は電話をすぐに切った。



「三杉様、新田様、フライトのお時間となりました。
 ただいまより……」


機長の声が響くと飛行機は日本を目指して滑走路へと移動し、
浮遊感と共に離陸を告げた。


飛行機で過ごす時間、
如月のことを考えながら体の休息に勤めた。


「三杉様、由毅様より空港までの迎えの車についての連絡がありましたが、
 いかがいたしましょうか?」

「迎えは友達に頼みましたので大丈夫です」


飛行機内で休息中、食事と由毅からの連絡で起きることもあったが、
出張の間の不眠を取り戻すかのように眠ってしまって聖仁に起こされる形になった。


日本で空港に到着した途端、早谷の乗務員たちに見送られて飛行機を後にする。
入国審査と税関を通過して荷物を受け取ると、スマホで一綺へと連絡を入れる。


すると電話よりも近いところで一綺の声が響いた。
< 64 / 115 >

この作品をシェア

pagetop