ディモルフォセカの涙
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 その後、実花さん達のリサイタルは始まり、クラシックの本格的な音がこの空間に鳴り響く。

 さっきまでのガヤガヤとした雰囲気は消え、うっとりと聞き入る人々の姿、贅沢なこのひと時。

 ピアノを弾く実花さんはとてもドラマチックで、指が鍵盤の上を流れるように動く。肩に力が入ることもなく演奏はとても素晴らしいものだ。

 急遽、リサイタルに参加した太田さんはヴァイオリンを弾く、音合わせなんてしていないはずなのにピッタリと皆と息が合っている。彼の演奏もまた素晴らしいのひと言に尽きる。

 数曲弾き終えた後、実花さんはピアノから離れる。


「それでは、今日ここに参加してくださった
 皆様に少し早いクリスマスプレゼント

 最後に聞いてください」


 実花さんはアコースティックギターを手に取り、クリスマスソングを奏でたと思ったら演奏をすぐに止めた。ざわつく観客を前に、彼女は私のことを呼ぶ。


「ユイ先生もご一緒に、ほらっ早く」


 私は実花さんの隣に立ち、誰もが知っているクリスマスソングを歌う。

 実花さんと一緒に歌う、その姿----パシャリとカメラに収められ、切り取られたそのシーンは残る。

 大人達が楽しみながら奏でる音を子供達は真剣に聞いている。

「みんなも、一緒に歌って」----大人も子供も交えて大合唱、そして、幕は閉じた。
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