ディモルフォセカの涙
 現在、多岐にわたって活躍している女性陣にスポットライトを当てたイベント、主体は音楽フェスだが、ファッションモデルやコメディアン等も参加する場を設けるらしく、枠を超えた催しとなる。


「この度、正式にオファーがあり
 あなたの出演が決まったわ
 
 近々、公式サイトにもその旨を
 報告します

 ツアーの合間になるけれど
 ユウ、頑張れるわね」

「はい、大丈夫です!」

「さあ、忙しくなるわよ」


 私と同じようにシンガーソングライターである女性アーティスト達も集まるイベント、その場所に、この私も参加できる。それはとっても嬉しい出来事で、やりがいがある。----あ~、今すぐ彼方にこの事を伝えたい。彼方も絶対、喜んでくれるはず!

 彼方に、一刻も早く……。あ~、私ってばバカだ。彼方には会わないって決めたくせに。もう、彼方に会いたくなってるじゃん。ダメじゃん、わたし----さっきまでのテンションが嘘のように下がる私を見つめる、社長。


「ユウ、どうかした、何か心配事?」

「いえっ……」

「あと、そうね、話すのはまだ
 少し後にしようと思っていたけど

 ユウ、あなた
 カバーアルバムを出す気はない?」


 社長の突然の言葉に、私は驚く。


「カバーアルバムですか?」

「そう、今すぐって話じゃないのよ
 
 ツアーを終えて、その後に考えて
 みてほしいの」

「はい」
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