セカンドラブは魔法の味
「そっか・・・お医者さんになったんだね。・・・偉いね、大変なハンデを背負ってるのに・・・。優しい子だね・・・」

「そんな事・・・ないです・・・」

「有難う先生・・・私の為に・・・」

「大丈夫だから、生きてよ」


 春子はそっと首を振った。


「・・・これは、私が決めて来た・・・人生なの・・・。だから・・・先生は、何も悪くないから・・・自分を責めないで・・・」

「何言ってるの・・・」

  
 春子はギュッと心優の手を握った。

「先生。・・・私の主人と娘の事・・・お願いしたいの・・・いい? 」

「え? 何言っているの? 」

「先生なら・・・きっと、主人も娘も・・・好きになるから・・・」

「そんな事・・・あるわけないじゃん・・・こんな私・・・」

「・・・大丈夫だよ・・・。10年・・・待ってて・・・先生の苦しみ・・・私が・・・」



 コンコン。

「先生、ご家族の方がいらっしゃいました」


 看護師がやって来た。


 駆けつけてきたのは、赤ちゃんの涼子を抱いた幸弥だった。


 容態を説明すると、心優は他の患者の下に行った。



 今夜が峠と言われて、幸弥はそのまま付き添っていた。




 そして・・・春子は朝方に息を引き取った。



 


 幸弥は心優をギュッと抱きしめた。

「・・・有難う。ハルを助けようとしてくれて。そして、ハルの為にこんなに苦しい思いをさせて、すみませんでした」

 
 そっと身体を離して、幸弥は心優を見つめた。


「さっき言いましたよね? もう、ここで終わりにしようと」

「・・・はい・・・」

「安心して下さい。もう、終らせましたから」

「はぁ? 」


 幸弥はお墓を見つめた。
< 30 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop