セカンドラブは魔法の味


「ほら、やっぱり痛いところがあるんですよね? ちゃんと、診てもらいましょう」

 女性は何も言わず視線を落とした。


「運転手さん、このまま病院に行ってもらえますか? 」

「はい、分かりました」


 運転手はタクシーに乗り込んだ。


「さっ、行きましょう。歩けますか? 」

 ほっといてくれ! と言いたそうな目をしている女性。

 だが、仕方なくタクシーに乗って病院に行く事にした。


「光友総合病院。そこに行って・・・」

「はい、わかりました」


 女性はそれだけ言うと、黙ってしまい何も話さなくなった。


「すみません、お名前を教えて頂けますか? 僕は、京坂幸弥です」

 そう言って、幸弥は名刺を女性に渡した。


 名刺を受け取ると、女性はじっと名刺を見つめたまま黙っていた。

 幸弥は女性の返事を待った。


 だが・・・名刺を持つ女性の手が震えているのを、幸弥は目にした。


「どうかしたんですか? 」

 そう言って、顔を覗く幸弥。

 女性はそっと顔を背けた。


「・・・あんたみたいな偉い人に、名乗る名前なんてないから・・・」

 そう言って、女性は押し黙ってしまった。


 なんとなくそんな女性を見ていると、幸弥は胸が痛んだ。

 
 どこか痛々しそうな・・・それでいて悲しそうな女性を見ていると、何故かほっとけない気持ちが幸弥の中に込みあがってきた。


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