セカンドラブは魔法の味
「あれ? 先生、どうしたんですか? 足、引きずっていません? 」
通りかかった女性看護師が、歩み寄ってきた。
「別に・・・さっき、外で転んだだけ」
「え? 大丈夫ですか? 」
「大したことないから。歩けるし」
「でも、左手腫れていますよ。レントゲン、とってもらって下さい」
「うるさいなぁ、どいつもこいつも! 転んだだけ、なんでレントゲンなんか・・」
「転んだだけでも、ちゃんと診てもらって下さい。明後日、オペが入っているんですよ! 」
「うるさい! うるさい! もう、分かったよ! 」
女性は耳をふさぎながら、早歩きで去って行った。
「あの、すみません」
幸弥が看護師に声をかけた。
「どうしました? 」
「先ほどの女性の方は? 」
「ああ、桜本先生ですか? 」
「先生? もしかして、ここの病院のお医者さんですか? 」
「はい。外科医の桜本心優(さくらもと みゆ)先生です」
「外科医? それなら大変です。あの、すみません。さっき、僕が乗っていたタクシーが、先生を引きそうになってしまったので。病院に連れて来たのですが」
「え? そうだったですか? 」
「はい。事故は後から色々と症状が出るので、しっかり見てもらわないと」
「わかりました。すぐに対応します」
「お願いします。僕は、ここで待っているので。結果だけ教えて下さい。何かあれば、僕が責任を取りますので」
「わかりました」