婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「そっか。でも、それなら良かった。里桜を誘いたがる男はたくさんいると思うから、結構心配してるんだ」
「そんなこと……」
「あるよ。里桜が気付いてないだけ」
そんなことは絶対にないと自覚しているけど、そんな風に言われてしまうと言い返せなくなる。
「そんなこと、言ったら……貴晴さんが、女子社員の皆さんに大人気だっていう話を聞きましたよ?」
こんなこと言うつもりなかったのに、口からするっと出てきてしまい、内心〝しまった〟と後悔する。
貴晴さんはなんでもなさそうに微笑を浮かべて、私の頬をさらさらと撫でた。
「へぇ……そんな話をしたんだ」
「はい……だから、やっぱり、婚約しているということは伏せておいて良かったと、思ってしまいました」
その話を聞いたあとから、何度考えてみても〝知り合い〟として入社してよかったと思っている。
それを知らないで婚約者だなんて紹介されていたら、反感を買っていたに違いない。
それこそ居辛くて、すぐに退社することになったとさえ思える。