婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
食事の用意が済みテーブルにつくと、いつも通り和やかな夕食が始まる。
貴晴さんはビーフシチューが好きらしく「すごく美味しい」と大絶賛してくれて、リピートするレパートリーに追加された。
「不思議に思うというか、女性って話すの好きだなっていつも思うけど、そんなに何時間も話すことってあるの? 男にはあんまりそういうことってないからさ」
シチューをスプーンですくいながら、貴晴さんはそんな疑問を口にする。
確かに、男性からすれば女子トークは未知なる世界なのかもしれない。
「そうですね……考えたこともなかったですけど、尽きないものですよ。相手にもよると思いますけど」
女子トークが無限といっても、相手が気の許せる友達という部分は大前提。
女子が集まれば、というものでもない。
「そっか。じゃあ、今日の友達は里桜の気の知れた大事な友達なんだね?」
「はい。高校時代からの友達です。あ、彼女が例の婚活イベントに私を誘った子で……」
「ああ、そうだったんだ」
そこまで言って、今日話したことを再び思い出す。
『じゃあそうやって、ずっとモヤモヤしてるの?』
日菜子の声が耳の奥で蘇った。