婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
何を見たいかを言い合いながら、水族館内へと入っていく。
照明の落ちた館内を進むと、すぐに巨大な水槽がたくさんの魚を泳がせて出迎えてくれた。
高い天井までの水槽には、魚の大群が賑やかに泳ぎ、サメやエイなど大きな種類も優雅に泳いでいる。
まるで海の中に沈んで見ているような圧巻の光景に、しばらく顔を上げてじっと水槽を見入っていた。
私たちの前方で、中国語らしき言葉で盛り上がっている数名のグループが一斉に動き出し、その中にいる大柄な男性が喋りながら私にぶつかりそうなすれすれを容赦なく歩いてくる。
それに気付いた貴晴さんがすかさず私の肩を抱き、守るように引き寄せてくれた。
そのおかげで、ぶつかることなく一行は私たちの向こうに通り過ぎていく。
「大丈夫?」
「ありがとうございます」
些細なことかもしれないけど、ちゃんと守られているようで嬉しくなる。
貴晴さんは肩を抱いた手で再び手を繋ぎ直した。