婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
目的の横浜の水族館に着いたのは、夕方五時を回った頃だった。
日は落ちはじめ、入場ゲートに向かう道には水族館を楽しんだ帰りの家族連れと多くすれ違う。
大きなイルカのぬいぐるみを抱いて歩く子どもが可愛くて、つい微笑ましく眺めていた。
車を降りてすぐ、貴晴さんは「デートと言えば……」なんて言って私の手を取った。
指を絡めて繋がれると〝デート〟ということを改めて意識してしまい、胸を高鳴らせてしまった。
まだこの感覚に慣れない。
握られた手に入れる力加減だとか、一緒に歩く距離感、なにより緊張で手汗をかいている気すらする。
でも、こうして手を繋いでもらうことは決して嫌ではない。
緊張はしても、やっぱり嬉しく感じる気持ちが大きい。
「里桜はクラゲが見たいって言ってたよね」
「はい。貴晴さんは見たいものありますか?」
「イルカのショーがプロジェクションマッピングで見られるらしいから、それが見られたら」
「えー、そうなんですか? それ、きっと綺麗ですよね」