婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「普通に可愛いと思ったので。私、ぬいぐるみ好きですし」
部屋にも何個かお気に入りをそっと飾ってある。
いい歳してぬいぐるみも……と思ったりもするけれど、好きなものはしょうがない。
「だから、嬉しかったです。大事にします」
袋の上から顔を出しているイルカを覗き込み、貴晴さんを見上げる。
貴晴さんは「そっか」と微笑を浮かべた。
「今日、里桜と過ごすのがすごく楽しくて……年甲斐もなく、はしゃぎすぎたかなって、ちょっと反省してた」
突然そんな告白をした貴晴さんは、繋ぐ手にわずかに力を込める。
貴晴さんのような人がそんなことを言うなんてことに内心驚いて、私は見上げていた貴晴さんから目が離せなくなっていた。
「初めてなんだ……こんな風に誰かと一緒にいて、楽しいとか幸せだって感じることが」
その言葉は私が特別だと言ってくれているようで、胸の奥がぎゅんと震える。
トクトクと静かに、次第に速く鼓動が鳴り響き、繋いだ手から伝わってしまうのではないかと心配になった。