婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 ひとしきり水族館を楽しみ、館内を出た時にはすっかり夜空に包まれていた。

 遊園地と一体となっている広いパーク内を、入場ゲートへと向かって帰っていく。

 私の手には、水族館の出口で立ち寄ったお土産店で見ていたシロイルカのぬいぐるみが袋に入って抱かれている。

 見かけてつい「可愛い!」なんて言ったら、貴晴さんが「じゃあ連れて帰ろう」とあっさりレジに持っていってしまったのだ。


「貴晴さん、ぬいぐるみ、ありがとうございました。なんか、すみません……私がつい、可愛いとか言っちゃったから……」

「今日の記念にと思ったんだけど、ごめん、もしかして欲しいってわけじゃなかった?」

「えっ!?」


 貴晴さんは付け加えるように「いや、何も聞かないで勝手に買っちゃったから、もしかしたらそこまで欲しくなかったかもって」なんて自嘲気味に笑ってみせる。

 誤解されてしまっては!と焦り、「そんなことないです!」とかぶせ気味に言い返していた。

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