婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「俺のこと、覚えてます?」
捕まってしまった……。
空気の読めていない声のトーンに、仕方なく顔を上げる。
改めて顔を見て、気になっていたことが一本の線で繋がった。
こ、この人……日菜子に誘われて来たここの婚活イベントで、日菜子と一緒に帰った塩顔の人……!
どこかで見たことがある気がすると、ずっと引っかかっていた。
そのモヤモヤが、やっとはっきりと答えを出す。
気のせいじゃなかった……。やっぱり、あのハロウィンの時より前に会ったことがあったんだ。
「この間のハロウィンの時、ここの婚活パーティーの会社の人ってわかったから、またイベントに参加したら会えるかと思って。あの後、何か所か参加してみたけど、やっと今日会えた」
しかし、相手はあのハロウィンの時に私と初めて会ったと思っているようで、その前のことは覚えていない様子。
あの日は日菜子と立ち去っていったくらいだから、記憶にもないのだろう。