婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「あなたに会うために何度もイベントに参加してたんだ」
話の雲行きが怪しくなってきて身構える。
自分のことは自分でしっかり守ろうと、前回心に誓ったばかり。
ここはばしっと、はっきり言うしかない。
「今日は、このあと時間取れないかな? この間は邪魔が入ったから誘えなかったけど」
「お客様、そういったことは申し訳ありませんがお断りいたします」
努めて丁寧に、お客様への対応としてお断りする。
ぺこりと頭を下げて「失礼いたします」と立ち去りかけると、立ち塞がるように前に立たれてしまった。
すっと寄り添うように横に立たれたと思えば、肩にがしっと手が回される。
「そんなこと言わないで。とりあえず、もう少しふたりで」
「やめっ――」
肩を掴んだ手が他からの力で無理矢理剥がされ、その反動で体がよろける。
すかさず倒れないように背中を支えられると、次の瞬間には塩顔の彼が壁に押し付けられていた。
「一度で懲りず二度まで……」
ぞくりと悪寒が走るほど低く、冷酷な声が聞こえた。