婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「なんだよ、本当に着たのか」


 玄関を開けて出てきた自分と同じ顔は、面倒くさそうに目を細める。

 玄関の端に女性もののフラットパンプスが揃えて置いてあり、「入るぞ」とドアの向こうに押し入った。


「おい貴晴、一体なんなんだよ?」


 廊下を進み、奥のリビングへと入ると、ソファに掛けたひとりの女性が驚いた表情で俺を凝視していた。

 白いタートルネックニットの上から着た黒いワンピースの腹部は大きく前に膨らみ、妊娠しているのは一目瞭然だった。


「すみません、突然お邪魔します」


 彼女に挨拶をしたところで、後ろから晴斗(はると)が現れる。

 俺たちが並んだ姿を見て、彼女は更に目を大きく見開いた。

 彼女のこの様子を見ると、晴斗も俺の存在を話してなかったようだ。


「は、晴斗さんが……ふたり……」


 瓜二つの、一卵性双生児。

 兄の晴斗と俺は、見分けがつかないほど似ている双子の兄弟だ。

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