婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 晴斗は父の意思を継いで医師の道を志し、今は外科医として多忙な日々を送っている。

 つい数ヶ月前まで離島の病院に長期出向していたはずだったが、どうやら最近帰ってきたようだ。

 そもそも、今日こんなことにならなければ、晴斗はまだ東京にいないと思っていたと思う。

 里桜の話を聞いていて、まさか晴斗が東京に戻ってきている?という考えに至ったのだ。

 この状況を見て、里桜が間違いなく晴斗とそこに掛ける妊婦の彼女を見て勘違いしてしまったことが証明された。


「で、なんの用があってここまで来たんだよ」

「ああ、今話す。だから、悪いが少し一緒に来てほしい」

「はぁ? 今度はなんだよ」


 晴斗への説明はあとに回して、驚いたままの彼女に「申し遅れました」と先に謝罪する。


「晴斗の弟の、成海貴晴と申します。すみませんが、少しの時間、晴斗を借りていってもよろしいでしょうか?」


 丁寧に断りを入れると、彼女は雰囲気で何かを察してくれているのか、即答で「はい」と了承してくれる。


「ありがとう。すぐに返しますので」


 そう約束して、「悪いな」と晴斗に同行を求めた。

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