婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「貴晴さん……」


 傾いた顔が近付いて、そっと唇が重なり合う。

 静かに目を瞑ると、唇の柔らかい感触が深まった。


「里桜、唇冷たい」

「あっ、ごめんなさい……」


 触れ合うか触れ合わないかの距離感で、貴晴さんは薄い唇に笑みを載せる。


「いいよ、温めてあげる」


 今度は包み込むように唇を塞がれ、温かい舌が私の唇をすうっとなぞった。

 導かれるように唇を開くと、ふたりの舌先が触れ合う。

 それだけで体の中心がきゅんと震え、甘い痺れのようなものが全身に広がっていった。


「貴晴、さんっ……」


 息が上手くできない私は、わずかに離れたその隙に訴えるような声を上げる。


「まだだめ」


 でも、貴晴さんは何かのスイッチが入ってしまったように、私の唇に再度迫った。


「っ、くしゅん」


 唇が触れ合う寸前、込み上げたくしゃみに俯いた。

 真上で貴晴さんがクスクスと笑う。


「ごめん。体も冷たくなってるし、温かくして早く休んだ方がいいね」


 貴晴さんはそう言って立ち上がり、「お風呂入れてあげる」と私の元を離れていった。

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