婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 実家が祖父母と近所だということもあり、子どもの頃からよくおじいちゃん、おばあちゃんのところに遊びに行っていた。

 今もそれは変わらず、帰省すると祖父母の家についつい長居してしまう。

 私がちょうど二十三歳、事務職をして三年が経とうとする頃、転機は訪れた。

 祖父が元々患っていた腰痛を悪化させ、入院生活を余儀なくされたのだ。

 その後、退院しても以前のように活発には生活ができず、介護ヘルパーさんに訪問してもらうようになった。

 祖父が介護を必要とすることになると、その負担はもちろん祖母にもかかってくる。

 そのサポートに近くに住む私の母が訪れることが多くなり、そんな実家の様子を目の当たりにして、単純に介護の知識が欲しいと思った。

 手助けをしたいという思いが一番、そして、いずれ自分自身にも訪れるであろう両親の介護。

 学んでおいて損はないし、今の自分には必要なことだと強く思ったのが全ての始まりだった。


「里桜ちゃん」

「あ、洋司(ようじ)さん。食事ですか?」

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