365枚のラブレター

(クララside)

「こんにちは」


私はお弁当屋成瀬のドアをカランと開けた



「え?クララちゃん?」



「俺、
 歩とデートしてきていいよって言ったのに
 なんで?」



お弁当屋のエプロンをした私に
奏多さんも美紅さんも
目をまるくしてビックリしていた



「歩君・・・
 尊さんの家に行くことになってたみたいで」



「そうだったんだな

 じゃあ、まだプレゼントは渡してないのか?」



「はい。でも、あとで
 寮に来てくれることになってます」



「そっか~」



「あの・・・
 今日バイトに入っても良いですか?」



「クララちゃんいいの?
 すっごく助かる!」


私は奏多さん目当てのお客さんをさばきながら
忙しい時間を過ごした



でも全然大変じゃない!
もうすぐ、歩君に会えるんだもん!



お客さんがいなくなり
忙しさがひと段落したころ



カランカラン



「いらっしゃいませ・・・・

 え・・・・?」



女の子と入ってきたのは
歩君だった



「歩君・・・」



「クララ・・・」



歩君は見開いた眼で私を見ると
さっと私から視線をそらした



「このお店の前で
 あゆ君に偶然会ったの・・・

 ここが、クララさんのバイト先なのね。

 私一度
 有名な卵焼きを食べてみたかったの

 幸せになれちゃう卵焼きなんでしょ?」



紗耶香さんがニコニコしながら
歩君に話しかけた



私も美紅さんも奏多さんも
今の状況が呑み込めず
固まっている



「クララさん、卵焼き一つお願いします」



「あ・・はい」



私はトレイに卵焼きを入れると
お会計をした



「324円です」



「歩君、2円ってある?」



紗耶香さんに言われ
歩君はズボンのポケットから
お財布を出した



あ・・・・・



その財布・・・・・



私が歩君に買った財布と・・・同じだ・・・




「歩、お前財布変えたのか?」


奏多さんが聞いた



「え・・・ああ」



「その財布
 私からの誕生日プレゼンとなんです

 カルボラの黒い財布を
 欲しいって言ってたから」



紗耶香さんにもらったのね・・・



私も
同じ財布を
買ってあったのに・・・



喜んでくれるかなって
思ったのに・・・



急に歩君が
優しく話しかけてきた



「クララ、あとで迎えに来るよ
 8時でいいよな・・・」



・・・・・・



私はどんな顔で
歩君と会えばいいんだろう・・・



笑っていられる自信がないよ・・・




「今日は・・・」



「ごめん、歩君。

 クララちゃんは
 私ときぬさんのお店に行くのよ」



「え・・・そうなの?」



「さっき、きぬさんからお願いされちゃって

 試作中のどら焼きを食べに来てって

 歩君、お誕生日なのに、ごめんね」



美紅さんが私の気持ちを汲んで
歩君に断ってくれた



「あゆ君、家まで送ってくれない?」



紗耶香さんが子猫みたいに
甘えた声でお願いしている



「外は暗いし、紗耶香さんを送ってあげて」



本当は送ってあげて欲しくない!
紗耶香さんと一緒にいてほしくない!



でも私は
少しでもいい人と思われたくて
心の中で願ってることと
反対のことを言った



そして歩君と紗耶香さんは帰っていった



「奏多さんの言う通りでしたね」



「え?」



「歩君が欲しい財布・・・

 黒でしたね・・・

 私、あゆむくんのこと・・・

 何にもわかってあげてないのかも・・・」



紗耶香さんと並んで帰っていった
歩君の後姿が
目に焼き付いて離れなくて

美紅さんの胸でウワンウワン泣いた
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