ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
私はお婆ちゃんをおんぶして、救護室に運んだ。カーテンで仕切られた部屋に、寝台が並べられている。

「すみません、急患なの! 少し、お婆ちゃんを休ませて!」

すると、看護師らしき女性に、寝台はいっぱいだといわれてしまう。

「このお婆ちゃん、腰が悪いみたいで」

「ですが、ないものはなくて」

カーテンの奥にある寝台に、男女の姿が浮かんでいるのに気づく。

「ほら、コルセットを緩めてあげるから」

「やだ、ダメよ」

思わず、カーッ!と、甲高い声を出してしまった。男女の影はビクッと反応し、動かなくなる。

いちゃつくなら救護室ではなく、休憩室を使ってほしい。切実に。 

遠慮なくカーテンを開くと、男女は衣服を整え、焦った様子でいた。

「はい、二人とも超元気。このお婆ちゃん、腰を痛めているの。退いていただけるわよね?」

「あ、はい」

「どうぞ」

言うことを聞かなかったら、胸元に忍ばせた金貨を手渡すつもりだったが、素直に聞いてくれてホッとする。

しかし、いつの間にか、アストライヤー的な金持ち思考で問題解決しそうになっていたので、嫌気が差す。あの家で十六年暮らしていたので、もしかしたら感染していたのかもしれない。恐ろしや、アストライヤー家の金持ち菌。
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