ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
「どうぞ、こちらへ」

「あ、ありがとう、ございます」

長椅子の端に腰掛け、話題に耳を傾ける。

「みなさま、イクシオン殿下の聖獣お披露目、楽しみですわね!」

イクシオン殿下が召喚したという聖獣のお披露目が、本日の舞踏会の一大イベントのようだ。

「イクシオン殿下も、あまりこういった場に顔をお出しにならないから、拝謁を心待ちにしていますわ」

取り巻きの令嬢達は、エレクトラの言葉にコクコク頷いていた。

「今回の社交期で、王族の方々は一気に結婚を決められましたからね。何か、国王陛下から、お達しがでているのかもしれませんわ」

王族の独身男性陣は各々結婚適齢期である。選り好みしていないで、さっさと選べと言われていたのか。

「王太子カイロス殿下は、テティス国のセレネ姫と婚約が決まったようで」

「とても、お似合いでしたわ」

「将来は、安泰ですわね」

「あとは、イクシオン殿下だけですわ」

令嬢達の目が、突然キラリと光った。肉食獣の目である。

王族唯一の、婚約者が決まっていないイクシオン殿下は、この肉食獣達の恰好の獲物なのだろう。舌舐めずりをしながら、登場を待っているに違いない。

「アストライヤー様は、イクシオン殿下についてどう思われていますか?」

「可哀想に……」

「え?」

「あ、か、カッコイイなーと!」

 苦しい言い間違いであったが、皆、私の話なんて聞いていないのだろう。「そうですわね」と返してくれた。
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