ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
「アステリア様は、何を嗜んでいますの?」

特に何も。と言いかけたが、もしかしたら同士がいるかもしれない。

転生してからは一度もしていなかったが、料理と答えた。

「私は、料理を」

「料理、ですって?」

「ええ、料理です」

英語のテキストにある「あなたはトムですか?」「はい、トムです」みたいなやりとりになったが、今はどうでもいい。

問題は、批判的な視線にさらされている現状だ。

「料理なんて、下々の者達がすることでしてよ。どうして、そんなことをなさるの?」

「どうしてと言われましても」

「でも、料理って、家畜をさばいたり、手を血まみれにしたりするのでしょう? 汚らわしいわ」

エレクトラの言葉は痛烈だ。しかし、この反応は批難できない。貴族社会で、貴族の者が厨房に立つ行為はありえないのだから。

私がおかしなことを言っているのだと、理解している。

けれど、同時にがっかりしてしまった。生まれ変わった世界に、“職に貴賤なし”という言葉はないようだ。
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