ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
「アステリア嬢、そのドレス」

「ん?」

エレクトラはパッと扇を広げ、私のドレスを指し示す。

「あなたが着ていると、血のドレスみたいに見えますわね」

「どういう意味?」

「とても、お似合いだという意味ですわ」

喧嘩を売っているのか。ジロリと睨んだが、エレクトラはひるまない。周囲から。「きゃっ!」という悲鳴が上がるばかりだ。

「エレクトラ嬢、あなたも、お似合いよ。厚顔無恥って、そんな色をしているんじゃないかしら?」

またまた、「きゃー!」という悲鳴が響き渡る。ホラー映画ばりの、臨場感がでてきた。

エレクトラはやられてばかりではない。すぐに、言葉を返す。

「でも、似たような真っ赤なドレスを着ている者が、二人も存在したら個性を潰してしまうように思ってしまいますわ」

遠回しに、ドレスを脱げというのか。残念ながら、代わりのドレスは持ってきていない。

エレクトラは扇で口元を隠しつつ、目元をすっと細める。取り巻きの令嬢は、怯える目を私に向けていた。

味方は一人も見当たらない。

はあーとため息をつき、立ち上がった。

「私は、大広間には行かないから、安心して」

「どうして、行きませんの?」

「退屈だから」

そう宣言し、部屋から退室した。背後でエレクトラが何か叫んでいたけれど、耳に入っていなかった。
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