ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
それにしても、エレクトラの喧嘩を買ってしまったのは失敗だったかもしれない。もしかしたら、実家に抗議の一つや二つ、届くだろう。

まあ、父は領地にある山よりも自尊心が高い男なので、謝罪なんてしないだろうけれど。

アストライヤー家の血なのか、売られた喧嘩を買う以外の選択がなかったのだ。

恐ろしい血である。

エレクトラとの言い合いを思い出したら、頭に血が上ってしまう。

私達は生きとし生けるものを食べ、生きている。それなのに、調理する料理人を汚らわしいと言うなんて。

迷路のような庭を歩き、気を紛らわせる。冷たい空気が、カッカしていた体を冷やしてくれるような気がした。もう少し時間が経ったら、戻ろう。そして、一回だけ大広間に顔を出して、適当に徘徊(はいかい)して、お婆ちゃんの容態を確認して帰ろう。

そんなことを考えていたら、人の話し声が聞こえる。

「ねえ、もっと……!」

魔石灯の灯りに照らされ、男女の姿が影となって見えた。

またか、と思う。さっきのカップルとは、違うようだ。

以前、聞いたことがある。こういった催しは、不品行の温床と化していると。
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