ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
 ◇◇◇

一週間後――私は王都へ向かう馬車の中に腰掛けていた。

ガタゴトと進む馬車に座っていると、市場に売られていくような小牛の気分になる。

せっかくなので、牛の気分になって現状の嘆きを表現してみた。

「もー!」

「アステリア、怒らないの」

 嗜めるのは、従姉で一つ年上のエリス。急遽、私の王都デビューに付き合う人として選ばれた、哀れな娘である。

とは言っても、彼女もアストライヤー家の血が流れている。思いがけず社交界デビューができるので、ウキウキソワソワを隠しきれていない。

「ねえ、アステリア。あなたは、どうしてそんなに憂鬱なの?」

「だって、私、いかにもアストライヤー家って感じの見た目だし、恥ずかしいわ」

「あら、そのベリーピンクの髪、すてきじゃない」

エリスは金髪に澄んだ青い目の持ち主である。顔立ちはかわいい系で、羨ましくなる。

私は人外じみたド派手なピンクの髪に、赤い目を持ち、加えてつり上がった目はキツそうに見えるのだ。見た目だけで、大変な威圧感がある。

「この髪がイヤなのよ。ひと目で、アストライヤー家ってわかる、この髪が」

金持ちアピールが半端ないアストライヤー家の社交界での評判は、あまりよくない。金が持っているとひけらかす行為や言動を、彼らは悪いと考えていないからだ。

一応、かなりの額を慈善活動に費やしているが、貧しい者に施しをすることは恥ずかしいと思っているようで、ほとんど表沙汰になっていない。

主張するのは逆だよ、逆、と言いたい。まあ、聞かないだろうけれど。
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