人生の待ち時間


何がなんだか、訳がわからなかった。

突然、キスされた。謝られた。違う、そういう意味じゃないと言われた。

起こった事実を並べても、やっぱりよくわからない。混乱しすぎていたせいか、誰かに相談してみる事も、その時は思い付かなかった。

あの事を思い出すと、顔も身体も熱くなる。全力疾走した後のように、ドキドキしてくる。忘れようと思えば思う程、私の脳内はあの事に占拠される。

自分の思い通りにならない身体も頭も、かなりもて余していた。

何か言いたそうなタカくんだったが、お花見以降、タカくんからの連絡はない。営業部は忙しそうだ。あのお花見だって、無理やり開催したようなものだったし。

モヤモヤジリジリしながら日々を過ごし、お花見以降、二回目の週末を迎える金曜日、とうとう私はタカくんのスマホの番号をタップした。

「お疲れ様です!今、大丈夫ですか?」

『お疲れ!うん、今家に帰ってきたところ。大丈夫だよ』

タカくんのいつもと変わらない声のトーンに、モヤッとするような、ホッとするような複雑な心境だ。

自分から連絡したくせに何をどう話すのか、実はあまり考えていなかった事に、今さら慌てる。

「あの!……ですね……」

『そういえばアイちゃん、あの映画、始まったよね?』

「映画?あっ!そうです!始まりました~!」


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