人生の待ち時間
今時、何かのハラスメントに引っ掛かりそうなセリフだが、田舎の妙にアットホームな会社では、それが通ってしまっていた。みんなに、悪気がないのもよくわかるし。
結婚は焦っていなかった。ただ、タカくんとそうなればいいなとは、思っていた。
が、タカくんから結婚についての具体的な発言は、一切なかった。嫌がっているようにも、避けているようにも見えない。ただ、何も言わないのだ。『結婚』て言葉を、タカくんは知らないのかもしれない……そんな、ばかな事を思った時もあったくらいだ。
会社の飲み会の時は、苦痛だった。みんなの酔いが回ってくると、タカくんと二人、並んで座らせられる。人生の諸先輩方から『結婚とは』なんて、ありがたいお話を聞く事になるのだ。
タカくんは、終始にこやかに話を聞いている。私は、変な愛想笑いのまま顔が固まる。この時ばかりはタカくんの事、素直に尊敬してしまう。
先輩たちの話を聞いていると、私は居たたまれない気持ちになる。思わずタカくんに「ごめんね」と謝ってしまう。
「何でアイが謝るの?」
タカくんは、そう言うけど。先輩たちのお話は、主にタカくんに向けてのものだった。
「アイちゃんはいい子だ」、「ちゃんと責任をとれ」、「男としてけじめをつけろ」等々。
タカくんはモテるし、私の心配をみんながしてくれているのも、ありがたいと思っている。