捨てられる前に捨てましょう
「ソフィア様。こちらはいかが致しますか?」

「あら、この箱は……」

偽物の宝石で装飾された派手な箱は、約十年前にアディが誕生日のお祝いにと贈ってくれたものだ。

正直言って趣味が良いとは言えないけれど、婚約者からの贈り物を捨てる訳にもいかずにとっておいた。箱の中には、それ以降のアディからの誕生日祝いが仕舞ってある。

最近、全然見ていなかったなと、少し懐かしく思いながら箱の蓋を開く。

中には、大小様々な置物が隙間なく入っていた。アディと婚約してからのものだから当然だけれどかなりの量だ。

だけど……私は微妙な気持ちになっていた。

律儀に誕生日祝いを贈ってくる行動自体には感謝するけど、どうしてこれらを選んだのだろう。

毎年決まったように置物。しかも動物が多い。
猫に犬に熊……この時点で貴族令嬢が好むものではない気がする。

この置物を私にどうしろって言うのだろう。あまりに部屋の雰囲気にそぐわない為仕舞いこんでいたけれど、新しい夫婦の居間には置いた方がいいのかな? 出来れば置きたくないけど。

箱の隅にヘビの置物があるのに気づき、私はがっくりと項垂れた。
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