愛しい女(ﾋﾄ)

再開

それからの俺は時間を作っては、郁哉の店に通った。

彼女の会社に訪問しても、なかなか会うことが出来ず、接点がもてないまま時間だけが過ぎていった。

彼女に会えるように郁哉に頼んでもよかったが、なんとなく頼みたくなかった。

だが、彼女の勤務先以外なにもわからない状態の俺には郁哉の店に通うしか方法を思い付かなかった。

彼女に会うことができず、ただただ月日だけが過ぎていったある日。

仕事が早く片付いた俺は、その日も郁哉の店に来ていた。


「藤倉さん こんばんは。お久しぶりです。郁哉の妻の杏です。覚えていますか？」


俺を呼ぶ声の方へ顔を向ける。

そこには郁哉の嫁が立っていた。


「杏さん。こんばんは。結婚式以来だから、２年ぶりかな？」


「そうですね。覚えててくれて嬉しいです。隣 いいですか？」


「どうぞ。郁哉と待ち合わせ？」


「それもありますが、郁哉に話を聞いて、藤倉さんの話を聞きたかったんです。」