幸せな結末
「胎盤剥離。胎児の心拍かなり弱ってます。」
「脾臓破裂してます。腹直筋の切開後同時進行で帝王切開術と脾臓摘出します。」
「はい」
オペ室に緊張が走る。
朝陽はオペの経験が多いだけに緊急の状況でも冷静に判断して感覚でメスを入れていく。
理恵は新生児への対応ができるように新生児集中治療室のスタッフと連携しながら母体のオペのフォローと同時進行で準備していた。
「でます。」
産婦人科の医師の言葉に一度朝陽が場所を理恵に譲る。
すかさず理恵が朝陽の位置に入り赤ちゃんを受け取った。
ちいさなちいさな命。産声を上げない。
理恵はすぐに小児科のスタッフが用意した新生児用の処置台に赤ちゃんをのせた。
吸引を始める。

理恵が離れてすぐに朝陽は再び破裂した脾臓の摘出や血管の修復を始めた。

「生まれましたよ。小さな小さな女の子です。お母さんも頑張りましょうね。」
朝陽が意識のない患者に話しかける。
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