嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
Ⅰ嵐の前触れ
「ったく、なんでオレがこんなことを...」


「波琉、うるさい!仕方ないじゃない、誰もやらないんだから」


「だったらもっと簡単なのにすりゃ良かっただろ?」



オレと朱比香は1年10組の出し物の準備を進めていた。


実行委員長に立候補した朱比香がオレを相棒に指名したせいでオレは副実行委員長になってしまったのだ。


オレたちのクラスはカフェをやることになり、メニュー選定や材料費の計算、スタッフの人数、配置、シフトなど色々決めなければならない。


生憎、朱比香はそういったことを率先してやるリーダーシップも決断力も計画性も、何一つとして持ち合わせていない。


朱比香は名ばかりで、オレが実質委員長だ。


朱比香は他人の目に留まることしかやらないからな。


それを分かってるから誰も手伝わない。



「そういやさ、あたしこれからミスコンのポスターに使う写真の撮影があるから、ちょっと生徒会室に行ってくるね。だから、あとはよろしく」


「はあ?!」


「怒んない、怒んない。ちゃあんと終わったら帰ってくるから。それまで頑張って」



朱比香。


お前、オレをいくつだと思ってる?


オレは母親の帰りを健気に待つ幼稚園児か。


少なくともオレはお前より大人だからな。


そう言ってやりたかったが、我慢してオレは1人黙々と事務作業を進めた。


クラスは30人だから3チームに分けて2時間交代制にし、接客が6人、調理が4人にすればいいと思った。


足りなかったら他のチームから応援を呼ぶしかないし、あとは臨機応変な対応が求められる。


そして、最大の問題はカフェのメニューか...。


一般的なソフトドリンクとクッキーやカップケーキではインパクトに欠ける。


ああ、どういうメニューだったらウケるんだ?


I love water.だから全く分からんわ。


カフェで一杯500円とかするコーヒーなんか飲む気にならないし。


スーパーで普通に900ミリが110円くらいのコーヒー売ってるから、コスパ重視の節約男的にはそれで十分だ。


せっかく人については決まってきたのに、肝心のメニューが決まらんとは...。


誰か...ヒントをくれ!


と思いながら椅子を後ろに傾けた


―――その時。



「うわっ!」



びっくりして大声を出してしまった。


オレの後ろの席に...


アイツが座っていた。
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