【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
彼がはいと渡したのは、私が書いたのと同じ書式で書かれたプロフィールだった。私相手にわざわざ書く必要もないのに、びっしり埋めている。
さっき諏訪さんは、『お母さんへのごあいさつ』と言っていた。私に父親がいないことを、プロフィールを読んでちゃんと把握しているのだ。
彼は私が思う以上に、生まじめなのかもしれない。
はじめて見る、諏訪さんの年収。身長、体重。趣味……『封印中』。
封印中?
続いてPRにも目を通す。
『正直、仕事がとても忙しく、プライベートをゆっくり楽しむのは難しいかもしれません。ですがパートナーと過ごす時間はきっと私の癒しになる。相手にとってもそうであればいいと願っています』
「目の前で読まれると、さすがに恥ずかしいな。帰ってからにしてくれ」
諏訪さんが顔をしかめ、私の持っていたクリアファイルを手でぐいと押した。
私も恥ずかしくなっていたところだった。
まるでプロポーズの言葉を読んでいるような気分になる文章だったからだ。
「まずは暮らしをすりあわせる必要があるだろうな。準備期間として、3か月ほど一緒に暮らしてみるのはどうだろう。もちろん結婚を前提に」
「承知しました」
「今日にでも打ちあわせをしよう。昼は一緒に出られる? 移動のついでに食べていくつもりなんだが」
「大丈夫です」
よし、と彼が微笑んだとき、数人の社員が出社してきた。
諏訪さんが何気なく手を差し出す。握手だ。
私は新たなプロジェクトに加わったような、高揚した気分で手を握り返した。


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