【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
にこっと笑う母を、心底誇らしく思った。
簡単に言えた言葉じゃないだろうに。お父さまはどれほど救われただろう。
「お母さん……」
「だから花恋ちゃんは、私に遠慮してないで、一臣さんの家に戻って、結婚の準備をしなさい」
「気づいてた?」
「ぴんと来るんだよねえ、母の勘か、女の勘か」
彼女は私の手元に目をやり、クッキーの存在に気づいたらしい。「お茶にしよっか」とざっと小部屋を整え、ドアを閉めた。
離れを出たところで、ぎくっとした。横手の庭に、一臣さんのお父さまが立っていたのだ。
私のあとに出てきた母が、「あら諏訪さん」と親しげに話しかける。
「門が開いていたので……勝手に立ち入って申し訳ない」
「これからお茶なんです、一緒にいかが?」
「いや、私は、お嬢さんにもお話をしなければならないと思い……。車から姿が見えたもので、戻ってきたのです」
「私に?」
お父さまはうなずき、「花恋さん」と私に向き直った。
名前をおぼえてくださっていることに、まず感銘を受けた。
「はい」
「どうか、一臣の父親の言葉として聞いてください」
「……はい」
庭先の木から、ケキョ、とうぐいすが鳴き声をあげた。場違いな平和さがおかしかったけれど、お父さまは耳に入らなかったみたいで、硬い表情を崩さない。
「私がなにをしたかは、ご存知かと思います。私のことは、いくら恨んでいただいてもかまいません。ですが一臣には、いっさい関係のないことです」
声が似ているなあ、と感じた。
柔らかくて、ちょっとこもったように響く、独特な声。
「私は決して高潔ではなかった。ビジネスという言い訳のもとに、非道なこともしました。たとえ報いが降りかかったとしても、自分のしたことの結果であれば受け入れると、そう生きてきました」
簡単に言えた言葉じゃないだろうに。お父さまはどれほど救われただろう。
「お母さん……」
「だから花恋ちゃんは、私に遠慮してないで、一臣さんの家に戻って、結婚の準備をしなさい」
「気づいてた?」
「ぴんと来るんだよねえ、母の勘か、女の勘か」
彼女は私の手元に目をやり、クッキーの存在に気づいたらしい。「お茶にしよっか」とざっと小部屋を整え、ドアを閉めた。
離れを出たところで、ぎくっとした。横手の庭に、一臣さんのお父さまが立っていたのだ。
私のあとに出てきた母が、「あら諏訪さん」と親しげに話しかける。
「門が開いていたので……勝手に立ち入って申し訳ない」
「これからお茶なんです、一緒にいかが?」
「いや、私は、お嬢さんにもお話をしなければならないと思い……。車から姿が見えたもので、戻ってきたのです」
「私に?」
お父さまはうなずき、「花恋さん」と私に向き直った。
名前をおぼえてくださっていることに、まず感銘を受けた。
「はい」
「どうか、一臣の父親の言葉として聞いてください」
「……はい」
庭先の木から、ケキョ、とうぐいすが鳴き声をあげた。場違いな平和さがおかしかったけれど、お父さまは耳に入らなかったみたいで、硬い表情を崩さない。
「私がなにをしたかは、ご存知かと思います。私のことは、いくら恨んでいただいてもかまいません。ですが一臣には、いっさい関係のないことです」
声が似ているなあ、と感じた。
柔らかくて、ちょっとこもったように響く、独特な声。
「私は決して高潔ではなかった。ビジネスという言い訳のもとに、非道なこともしました。たとえ報いが降りかかったとしても、自分のしたことの結果であれば受け入れると、そう生きてきました」