【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
母は再び私に背中を向け、おびただしい量のバインダーや書類ケースを引っ張り出しては検分しはじめる。
様子がおかしい、というか普通すぎておかしい。
「さっき、一臣さんのお父さまがいらしてたよね。ねえ、まさか、なにか……」
「あら、見てたの」
振り返った母は、青ざめている私を見て、ぷっと吹き出した。
「やあねえ、旦那さんのお父さんを、もう少し信じてあげなさいよ」
「信じるって、べつに……」
「示談金でも持ってきたと思ったんでしょう」
……あたりだ。
そんなこすからいまねをする人ではないと信じたいけれど、あり得なくはない話じゃないか?
母は積み上がった過去の遺物たちを、雪崩を起こさない程度に均し、ぱんぱんと手の汚れを払った。
内容も確認せず、あるものをとりあえず突っこんだことがありありとわかる部屋だ。整頓上手の母が、こんな状態で二十年以上も放置していたなんて。
父と事業を失ったときの痛みがどれほどだったか、これだけでもわかる。
「ひどいありさまねえ。お父さんに笑われちゃうね」
「お父さまの用件は、なんだったの?」
「頭を下げてくれたの。自分の愚かさと卑小さゆえに、取り返しのつかないことをした。申し訳ないって」
「え……」
「勇気のある人だねえ。あんなふうに謝ることのできる人なんて、なかなかいないよね。大人になると、間違いを認めるのって本当に難しい」
「それで、お母さん、どうしたの……?」
「うーん」
ウエストがきゅっとすぼまった、クラシカルな形のワンピースの腰に手をあて、母は宙を見つめた。
「私はお父さんの無念も背負ってるから。もういいですよ、お気になさらず、なんて簡単には言えないんだけど」
「そうだよね……」
「ふたりで子どもたちの結婚を祝福しましょうって、伝えたよ」
様子がおかしい、というか普通すぎておかしい。
「さっき、一臣さんのお父さまがいらしてたよね。ねえ、まさか、なにか……」
「あら、見てたの」
振り返った母は、青ざめている私を見て、ぷっと吹き出した。
「やあねえ、旦那さんのお父さんを、もう少し信じてあげなさいよ」
「信じるって、べつに……」
「示談金でも持ってきたと思ったんでしょう」
……あたりだ。
そんなこすからいまねをする人ではないと信じたいけれど、あり得なくはない話じゃないか?
母は積み上がった過去の遺物たちを、雪崩を起こさない程度に均し、ぱんぱんと手の汚れを払った。
内容も確認せず、あるものをとりあえず突っこんだことがありありとわかる部屋だ。整頓上手の母が、こんな状態で二十年以上も放置していたなんて。
父と事業を失ったときの痛みがどれほどだったか、これだけでもわかる。
「ひどいありさまねえ。お父さんに笑われちゃうね」
「お父さまの用件は、なんだったの?」
「頭を下げてくれたの。自分の愚かさと卑小さゆえに、取り返しのつかないことをした。申し訳ないって」
「え……」
「勇気のある人だねえ。あんなふうに謝ることのできる人なんて、なかなかいないよね。大人になると、間違いを認めるのって本当に難しい」
「それで、お母さん、どうしたの……?」
「うーん」
ウエストがきゅっとすぼまった、クラシカルな形のワンピースの腰に手をあて、母は宙を見つめた。
「私はお父さんの無念も背負ってるから。もういいですよ、お気になさらず、なんて簡単には言えないんだけど」
「そうだよね……」
「ふたりで子どもたちの結婚を祝福しましょうって、伝えたよ」