【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「あっ……」
唇が離れた瞬間、鈍い痛みが身体を貫いた。
さらに奥深く、引き裂かれる感覚に、思わず「やめて」と抵抗しそうになる。だけどできなかった。
彼のほうにも、余裕なんてまったくないことに、気づいてしまったからだ。
ぎゅっと閉じていた目を開けたとき、ぼやけた視界に映った彼の顔。せっぱ詰まった表情と、濡れた瞳。
欲情、という言葉を使ったことなんてないけれど、はじめて人の顔の上に、それを見た気がした。
触れそうで触れない唇。花恋、とささやく吐息まじりの声。
ほかでもない一臣さんが、この私に対して、そういうものを見せているのだと思ったら、抵抗なんてどこかへ消えた。
痛みさえうれしい。彼の首に腕を回し、抱きしめてほしいとねだる。
彼はそのとおりに、ぴったりと身体を重ね、私が落ち着くまで、きつく抱きしめていてくれた。

もう少し寝ていていいよ。
夢うつつにそんな声を聞いた。耳をくすぐる唇の感触。
甘い感覚に酔いながら、タオルケットを身体に巻きつけ、再び眠りに落ちる。
次に目を覚ましたとき、部屋にひとりだった。
カーテンが少しだけ開けてある。そこから入る日射しで室内はじゅうぶん明るい。
身に着けている一臣さんのTシャツと、彼の匂いと、身体に残る違和感が、ゆうべのことが夢ではないと教えてくれる。
枕元の時計を確認したら、まだ7時前だった。
もう少し眠ろうと、起こしていた頭を枕の上に落としたとき、とんでもない頭痛と吐き気に襲われ、私は口を押さえてベッドを飛び出した。

とはいえ気分だけで、胃からはなにも逆流してこなかった。
一応歯を磨いて洗面所から出たところで、キッチンから顔をのぞかせ、こちらを見ている一臣さんと目が合う。
「失礼しました、ただの二日酔いです」
「ああ……」
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