【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
強張っていた表情をゆるめ、ほっと胸をなでおろす。なにかほかのことを想像したらしい。私は少し意地悪をした。
「なんだと思ったんです?」
「やめてくれ、そんなわけないとわかっていても心臓に悪い」
私は素足のまま、ぺたぺたと足音をさせてキッチンに入る。彼は料理をしていた。手元をのぞきこむ私に、彼が念を押すように言った。
「いやだとか困るとかいう意味じゃないからな」
律義な誠実さに笑ってしまった。
「はい」
「よし、できた」
彼が白いプレートの上にフライパンをひっくり返す。オムレツだ。
奥でコトコト音を立てているのは、きっとスープだろう。コンソメのいい香りがする。ただれた胃が、早く食べて落ち着きたいと鳴きだした。
一臣さんもまだ身づくろいはしていないらしい。髪は寝乱れて、格好もTシャツとスエットだ。私がプレートを運ぼうとすると、それを取り上げ、顎でダイニングを指した。
「疲れただろ、座ってて」
「……では、お言葉に甘えて」
実際のところ、全身が疲れていた。特に脚が動かない。無駄な力が入っていたんだろうか。だけどそうでもしないと、あの怒涛のように押し寄せる、怖いくらいの気持ちよさには耐えられない……。
「それは、思い出してる顔だな」
テーブルに頬杖をつき、ぼんやりしていた私の頬に、音を立てて一臣さんが口づけた。目の前にオムレツとサラダが乗ったプレートが置かれる。
「どうだった?」
「どう……」
続いてスープ、パン、そしていつもなら食後に飲むハーブティ。
「正直、安心しました。もしかしたら私には、ああいうことを楽しむ機能というか……、感性が備わっていないんじゃないかとも思っていたので」
私は昨夜のあれこれを振り返り、「でも、まだまだ未熟ですね」と反省した。
突然、ぐいと頭を抱き寄せられ、こめかみに熱いキスを受ける。
「ありがとう」
やけに思いのこもった声だった。
お礼を言われるようなことだっただろうか、と私は首をひねった。
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