【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「だから、控えてた」
「はは」
刈宿さんが乾いた声で笑った。あからさまにバカにしている態度に、一臣さんが悔しそうにぎろっとにらむ。
「なんであなたの前でこんな話をしなきゃいけないんです」
「知らないよ、バカバカしい。僕こそなにを聞かされてるんだ? きみの恋がはじまった瞬間?」
一臣さんがバンとテーブルを叩いたので、私たちは周囲の注目を浴びた。刈宿さんは大仰に目を見開き、両手を広げて肩をすくめ、煙草を灰皿で消す。
そして「ちょうど電話だ、失礼」と、さっと姿を消した。
いらいらと前髪をかきあげ、一臣さんは怒り心頭だ。
「ほんっとに癪に障るな、あの人は……!」
「あの、無理なさっているなら、吸っていただいても大丈夫ですよ。大事なコレクションも残っているんでしょう?」
ついでに今度見せてもらおうと思った。彼の部屋のどこかにあるに違いない。
だけど一臣さんは、「吸わない」と首を振る。
「出張とか、離れた場所では吸うかもしれないが。きみといるときは吸わない」
「そうですか……」
「一年間吸わずにいられたことは、俺の自信にもなってるんだ。だから簡単には曲げない」
趣味と言いつつ、やっぱり依存性のあるものという自覚はあるらしい。誇らしげに胸を張る姿に、微笑ましくなった。
「ちょっとうれしいです」
「なにが?」
「一臣さんの自信に、少し関わることができたのが」
彼がきょとんとする。私はビールを飲んだ。
「私ばかり、いただいていたので」
「花恋もくれたじゃないか」
一臣さんが、こともなげに言って微笑む。
「俺がCOOたりえたのは、花恋のおかげだ」
「そんな……」
「本当だよ。その力を存分に発揮して、早く本体に来てほしい。待ってる」
私は「はい」と約束した。
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