【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
積ん読状態だった文庫本が棚の下半分を埋めた。上半分には好みの小物を置きたいが、そんなものは持っていない。
クローゼット用に持ってきた、花柄の布でできたポプリのサシェを置いてみたものの、ぽつんとそれだけあるとよけいわびしいのでやめた。
センスがないと、こういうとき本当に悲しい。
振り向いたらもうローテーブルができあがっていた。
白い天板に白い猫足、引出しの取っ手は貝殻の形だ。天板の縁はバイオリンみたいな曲線を描いており、実用性をおおいに削っている。
「うれしそうだな」
「とにかくこういう、ゴテゴテといいますか、過度な装飾といいますか、かわいい以外に意義のないデザインといいますか、そういうものに惹かれるんです」
薔薇のラグの上にローテーブルを置いたら、部屋が完成した。
諏訪さんと入り口付近から出来栄えを眺める。
家具が入りきらなかったらまずいと思い、若干余裕を持たせたのが裏目に出て、なんとなくスカスカしている。だけどポイントごとに見ればとてもいい。
「どう? 理想的?」
「ちょっと違う気もしますが……、今の私のセンスではこれが限界かと」
正直に口にしたら、諏訪さんが顔をしかめた。
「いまひとつなら、理想に近づけるようなにかしよう。なんですぐに妥協するんだ? 仕事ではそんなそぶり、いっさい見せないじゃないか」
「仕事は私、たいていのことは求められた以上のクオリティで対応できますので」
「その正しい自己評価が、どうしてプライベートに生かされないんだ……?」
途方に暮れた声で言い、彼はズボンのポケットからスマホを取り出した。
「写真、撮っていい?」
「どうぞ……?」
部屋の中を歩き回りながら、あらゆる箇所の写真を撮っていく。やがて私のところへ戻ってくると、なにやらアプリを起動させた。
「なんですか?」
「モメントに《コアプラザ》って新機能がつくのは知ってる?」
もちろん知っている。
“本体”であるモメント・コーポレーションが威信をかけてローンチしようとしているサービスだ。
クローゼット用に持ってきた、花柄の布でできたポプリのサシェを置いてみたものの、ぽつんとそれだけあるとよけいわびしいのでやめた。
センスがないと、こういうとき本当に悲しい。
振り向いたらもうローテーブルができあがっていた。
白い天板に白い猫足、引出しの取っ手は貝殻の形だ。天板の縁はバイオリンみたいな曲線を描いており、実用性をおおいに削っている。
「うれしそうだな」
「とにかくこういう、ゴテゴテといいますか、過度な装飾といいますか、かわいい以外に意義のないデザインといいますか、そういうものに惹かれるんです」
薔薇のラグの上にローテーブルを置いたら、部屋が完成した。
諏訪さんと入り口付近から出来栄えを眺める。
家具が入りきらなかったらまずいと思い、若干余裕を持たせたのが裏目に出て、なんとなくスカスカしている。だけどポイントごとに見ればとてもいい。
「どう? 理想的?」
「ちょっと違う気もしますが……、今の私のセンスではこれが限界かと」
正直に口にしたら、諏訪さんが顔をしかめた。
「いまひとつなら、理想に近づけるようなにかしよう。なんですぐに妥協するんだ? 仕事ではそんなそぶり、いっさい見せないじゃないか」
「仕事は私、たいていのことは求められた以上のクオリティで対応できますので」
「その正しい自己評価が、どうしてプライベートに生かされないんだ……?」
途方に暮れた声で言い、彼はズボンのポケットからスマホを取り出した。
「写真、撮っていい?」
「どうぞ……?」
部屋の中を歩き回りながら、あらゆる箇所の写真を撮っていく。やがて私のところへ戻ってくると、なにやらアプリを起動させた。
「なんですか?」
「モメントに《コアプラザ》って新機能がつくのは知ってる?」
もちろん知っている。
“本体”であるモメント・コーポレーションが威信をかけてローンチしようとしているサービスだ。