【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
だけど違う色のアイシャドウを試してみたいとか、もっと濃い口紅を塗ったらどんな顔になるんだろうとか、ちょっとずつ気になってくる。
鏡すらときたまのぞくだけだった私が、自分について考えている。
「お待たせしました。終わりました」
テレビを見ていた諏訪さんが、こちらを向いて笑顔になった。
「へえ、似合うよ!」
「どこか変じゃないですか? これで合ってますか?」
彼が指で“回って”と指示してきたので、その場で一回転する。
「俺には、そこまで細かいところはわからない。でもすごくいいと思うよ」
「そうですか、安心しました」
服を買うとき、試着をするのが苦手なのは、待ちかまえている店員さんの前に、どんな顔をして登場すればいいのかわからないからだ。
なぜ今、その不安がなかったんだろう。
「よし、行こう」
「はい」
私はコートを手に、玄関へ向かう諏訪さんを追いかけた。
なにを作るか決めておかないと、買うものも決まらないと気づいたのは道中だった。レシピサイトをあれこれ見て、応用の効きそうなオムレツにした。
「そういえば、勉強会はどうでした?」
「いやー……、向こうが理解してないことはたしかだし、理解する気があるのかすら怪しいと思ったな」
買い物しながら、会話はやはり仕事のほうへ行く。
勉強会とは、行政や政府、小売業の大手のトップなどが、電子決済について業界の第一人者たちに教えを乞う場のことだ。
キャッシュレス化が国策となった今、決済サービスの業界の先端を走るテック、ひいてはモメントは、もはや省庁と切っても切れない関係にある。
特に最近は、偉い方々が最低限の知識を身につけるため、今日本でその分野の市場環境、動向、システムにもっとも詳しい人間だろう、諏訪さんに白羽の矢が立ち、講師役をさせられているのだ。
名誉ある仕事ではある。刈宿さんが熱心に諏訪さんのポジションを狙うのも、このへんのうまみを狙ってのことだろう。
とはいえ……。
鏡すらときたまのぞくだけだった私が、自分について考えている。
「お待たせしました。終わりました」
テレビを見ていた諏訪さんが、こちらを向いて笑顔になった。
「へえ、似合うよ!」
「どこか変じゃないですか? これで合ってますか?」
彼が指で“回って”と指示してきたので、その場で一回転する。
「俺には、そこまで細かいところはわからない。でもすごくいいと思うよ」
「そうですか、安心しました」
服を買うとき、試着をするのが苦手なのは、待ちかまえている店員さんの前に、どんな顔をして登場すればいいのかわからないからだ。
なぜ今、その不安がなかったんだろう。
「よし、行こう」
「はい」
私はコートを手に、玄関へ向かう諏訪さんを追いかけた。
なにを作るか決めておかないと、買うものも決まらないと気づいたのは道中だった。レシピサイトをあれこれ見て、応用の効きそうなオムレツにした。
「そういえば、勉強会はどうでした?」
「いやー……、向こうが理解してないことはたしかだし、理解する気があるのかすら怪しいと思ったな」
買い物しながら、会話はやはり仕事のほうへ行く。
勉強会とは、行政や政府、小売業の大手のトップなどが、電子決済について業界の第一人者たちに教えを乞う場のことだ。
キャッシュレス化が国策となった今、決済サービスの業界の先端を走るテック、ひいてはモメントは、もはや省庁と切っても切れない関係にある。
特に最近は、偉い方々が最低限の知識を身につけるため、今日本でその分野の市場環境、動向、システムにもっとも詳しい人間だろう、諏訪さんに白羽の矢が立ち、講師役をさせられているのだ。
名誉ある仕事ではある。刈宿さんが熱心に諏訪さんのポジションを狙うのも、このへんのうまみを狙ってのことだろう。
とはいえ……。