【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「そもそもお偉い方々の端末には決済アプリが入ってない。秘書に持たせて自分はスマホを持ち歩かないって人までいる」
「諏訪さんに話をさせる前に、まず自分で使ってみろと言いたいですね」
「言いたいよ。というか実際言ったんだが、通じたかどうか」
塩、コショウ、サラダ油というレベルの調味料からカゴに入れていく。スーパーはこんな時間でも、それなりの人で活気がある。
諏訪さんの言ったとおり、ほとんどが仕事帰りの風体だ。
「おおいに喜ばせそうで癪だが、次回からは刈宿さんに任せるのもありかもな。俺はこういう話に興味が持てない。泥くさい開発段階のほうがずっと好きだ」
「いつまでも、そうは言ってられませんよ」
気持ちはよくわかるけれど、能力があればあるほど、上に上に行かなければいけないのが組織だ。
諏訪さんは悩ましげにため息をついた。
卵、牛乳、チーズ、ハムも買い、マンションに戻った。手を洗って、すぐ調理を始めることにする。
ワンピースは短いお役目を終え、私は再び部屋着になった。
「フライパンもふたつあるし、協力するんじゃなく、それぞれに作ろう。そのほうがデータもたくさんとれる」
「承知しました」
……結果は散々だった。主に私のほうがだ。
「どうしてこんな真っ黒になるんでしょう」
諏訪さんの作ったオムレツは、形こそ崩れているものの、卵の色が美しく、食欲をそそる。私が作ったほうは、もはや言われないとオムレツとはわからない。
ダイニングテーブルに並べたふたつのお皿を見下ろし、私は肩を落とした。
私が“お嫁さん”の夢をそうそうにあきらめた理由のひとつが、これだ。小学生のころ、調理実習で学んだことを家で再現しようとして、才能のなさを知った。
「前途多難ですね、すみません……」
「いや、そんなことはないと思う」
腕組みをして、なにやら考えこんでいた諏訪さんがおもむろに口を開いた。
「諏訪さんに話をさせる前に、まず自分で使ってみろと言いたいですね」
「言いたいよ。というか実際言ったんだが、通じたかどうか」
塩、コショウ、サラダ油というレベルの調味料からカゴに入れていく。スーパーはこんな時間でも、それなりの人で活気がある。
諏訪さんの言ったとおり、ほとんどが仕事帰りの風体だ。
「おおいに喜ばせそうで癪だが、次回からは刈宿さんに任せるのもありかもな。俺はこういう話に興味が持てない。泥くさい開発段階のほうがずっと好きだ」
「いつまでも、そうは言ってられませんよ」
気持ちはよくわかるけれど、能力があればあるほど、上に上に行かなければいけないのが組織だ。
諏訪さんは悩ましげにため息をついた。
卵、牛乳、チーズ、ハムも買い、マンションに戻った。手を洗って、すぐ調理を始めることにする。
ワンピースは短いお役目を終え、私は再び部屋着になった。
「フライパンもふたつあるし、協力するんじゃなく、それぞれに作ろう。そのほうがデータもたくさんとれる」
「承知しました」
……結果は散々だった。主に私のほうがだ。
「どうしてこんな真っ黒になるんでしょう」
諏訪さんの作ったオムレツは、形こそ崩れているものの、卵の色が美しく、食欲をそそる。私が作ったほうは、もはや言われないとオムレツとはわからない。
ダイニングテーブルに並べたふたつのお皿を見下ろし、私は肩を落とした。
私が“お嫁さん”の夢をそうそうにあきらめた理由のひとつが、これだ。小学生のころ、調理実習で学んだことを家で再現しようとして、才能のなさを知った。
「前途多難ですね、すみません……」
「いや、そんなことはないと思う」
腕組みをして、なにやら考えこんでいた諏訪さんがおもむろに口を開いた。