【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
なにも言わなかったふりをするのも失礼だと考えたのか、彼女は自分の眼鏡を指さし、顔をしかめた。
「いつもコンタクトレンズなんですけど、今日は目の調子が悪くて。眼鏡ってこの鼻のとこ、メイク崩れません?」
私は困った。たしかに眼鏡をかけている同士ではあるものの、答えるべきことが見つからなかったからだ。
彼女のファッショナブルな眼鏡と、学生時代から同じフレームを使い続けている私の眼鏡を、同じ眼鏡と呼んでいいのかさえわからない。
迷った末、できるかぎり正直に言った。
「そうかもしれません。私は、その、ご覧のとおり適当なメイクしかしないので、気にしたことはないんですが」
もっと言うと、メイクが崩れる、という感覚も未知だ。崩れるほど塗っていないせいか、メイク直しという行為がなにをするものなのかわからない。
髪も、前髪以外をうしろでひとつに束ねているだけなので乱れようがなく、そのためそもそも、最低限の身づくろい以外で鏡を見る習慣がない。
皮脂が浮いてきたと感じたら、その場でティッシュで押さえるのみだ。
総務部の女性は、話す相手を間違えていることくらい最初から承知だというように、即座ににこっと微笑んだ。
「肌がきれいだから、しなくて済むんですよ。いいなあ」
たいしたケアもしていない私の肌が、平均以上にきれいなはずはない。
これ以上気を使わせてはいけないと思い、私はそっと会釈し、個室に入った。
数度の諏訪さんのチェックを経て、資料は15時45分に完成した。
よほどこの新プランが気に入ったんだろう、出力とデータと、両方をくり返し眺めてはうれしそうに笑っている。
「ありがとう、完璧だ」
「刈宿さんとはお会いになりました?」
「きみのつくる資料はきれいだよな。きれいな資料が必ずしも優れた資料とはかぎらないが、優れた資料というものは100パーセント、きれいな資料だ」
「話を聞いていただけます?」
「僕もきみに話がある。今日、はやく帰ったりする予定は?」
「え?」
「いつもコンタクトレンズなんですけど、今日は目の調子が悪くて。眼鏡ってこの鼻のとこ、メイク崩れません?」
私は困った。たしかに眼鏡をかけている同士ではあるものの、答えるべきことが見つからなかったからだ。
彼女のファッショナブルな眼鏡と、学生時代から同じフレームを使い続けている私の眼鏡を、同じ眼鏡と呼んでいいのかさえわからない。
迷った末、できるかぎり正直に言った。
「そうかもしれません。私は、その、ご覧のとおり適当なメイクしかしないので、気にしたことはないんですが」
もっと言うと、メイクが崩れる、という感覚も未知だ。崩れるほど塗っていないせいか、メイク直しという行為がなにをするものなのかわからない。
髪も、前髪以外をうしろでひとつに束ねているだけなので乱れようがなく、そのためそもそも、最低限の身づくろい以外で鏡を見る習慣がない。
皮脂が浮いてきたと感じたら、その場でティッシュで押さえるのみだ。
総務部の女性は、話す相手を間違えていることくらい最初から承知だというように、即座ににこっと微笑んだ。
「肌がきれいだから、しなくて済むんですよ。いいなあ」
たいしたケアもしていない私の肌が、平均以上にきれいなはずはない。
これ以上気を使わせてはいけないと思い、私はそっと会釈し、個室に入った。
数度の諏訪さんのチェックを経て、資料は15時45分に完成した。
よほどこの新プランが気に入ったんだろう、出力とデータと、両方をくり返し眺めてはうれしそうに笑っている。
「ありがとう、完璧だ」
「刈宿さんとはお会いになりました?」
「きみのつくる資料はきれいだよな。きれいな資料が必ずしも優れた資料とはかぎらないが、優れた資料というものは100パーセント、きれいな資料だ」
「話を聞いていただけます?」
「僕もきみに話がある。今日、はやく帰ったりする予定は?」
「え?」