【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「え?」
「真に料理ができない人間は、料理以外にもその兆候が必ず現れると思う。段取りができないとか、壊滅的に手先が不器用とか。だがきみにはそれがない」
「はあ……」
「俺はきみの調理の様子を見てた。フライパンを熱してる間、洗い物を始めたな、あれはなぜ?」
「時間がもったいない気がして……」
「卵液を入れてからも、残った材料を冷蔵庫に戻したりしてた」
「固まるまで少し置く、とあったので……」
それだよ、と諏訪さんが指をぱちんと鳴らした。
「おそらく、きみはマルチタスクに向いてるんだ。反対に、シングルタスクを行おうとすると、ほかのことが目につく」
ああ、あるかもしれない。
複数の業務を並行して進めるほうが効率がいいのを、自分でも感じる。
「ですが、それとオムレツとどう関係が……」
「料理は本来、マルチタスクだ。だけどきみの中で、そう認識されていない。だからわき道にそれたら戻ってこられない。そして焦がす」
「あっ……!」
目からうろこが落ちた気がした。
これまでにも何度か挑戦してはくり返した失敗。思い返してみればそのほとんどが、“調理中にほかのことをして焦がす”だったからだ。
待ち時間を有効に使っているつもりだった。だけど実際は、“待ち時間”であることを忘れていた。それが敗因だ。
諏訪さんが、ぴっと私を指さした。
「最初からマルチタスクだと認識していれば、洗い物をしながらフライパンの様子を見てたはず。俺の知るきみは、そういう作業をこそ得意とする人だ」
「意識を変えて、明日にでももう一度やってみます!」
思わず握りこぶしを作って答えた。できる気がする。成功のビジョンが、頭の中に描けている気がする!
ふと、教官のようだった諏訪さんの表情がやわらかくゆるんだ。首をかしげ、「明日?」と尋ねる。
「はい。あ……、ふた晩続けてオムレツはいやですか?」
「できたら、朝がいい」
私は困った。作れないというわけじゃない。けれど……。
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