庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「椎花」
「あ、えと……」
彼が探るような視線で見てくる。あー、自分の情けない話をすのは気が引ける。
だけど彼の一度決めたことは実行するという性格を知っているだけに、ここは観念せざるを得ないと悟った。
「実はね……」
私はしぶしぶことのいきさつを彼に話した。昔よく言われたみたいに、まぬけだ、ノロマだってばかにされるものだと覚悟の上だった。
だけど彼が開口一番に放った言葉は全く違っていた。
「すっぽかされた? どこのどいつだよ、その男は。俺が捕まえてやる」
ゾッとするような低くて冷たい口調。しかも彼のオーラが「怒」で満ちていて驚いた。比喩じゃなく、彼の背後から赤い炎が見えそうだと思った。
「そいつの名前は? 仕事場はどこだ」
「……違うの、もういいの。私も焦ってたし、ただ結婚してくれる相手がほしかっただけなのかもしれない。少し冷静になったらそう思えてきた」
早く彼の怒りを鎮めなければと思い、大袈裟におちゃらけてみせる。どうして私が焦らなきゃいけないんだと頭ではおかしいと思いつつ、さらに続けた。
「今も悲しくないっていうか。よくよく考えたらほんとに好きだったのかなー、なんて」
へへっと肩をすくませてみるが、彼は不機嫌なままで気まずくて俯く。