優等生の恋愛事情
ぎしぎしと鳴る階段を上がってロクちゃんの部屋へ行く。

台所で調達した飲み物やらスナック菓子だのをたんまり持って、夜更かしの準備は万端だ。

久しぶりに入ったロクちゃんの部屋は、ほぼ中学の頃のまんまだった。

汚部屋なんてことはまったくないけど、ぼちぼち散らかっていて、ぼちぼち片付いてもいる、そんな感じ。

変わったのはハンガーにかかっている制服くらいか?


「ぜんぜん変わらないね」

「まあな」


本の山、服の山、CDの山、BDの山。

片付いてるとは言えないけど、本人なりに分類されてるみたいな?

そういうとこも変わっていない。

ふとBDの山に目を留めると、ロクちゃんがすかさず言った。


「あ、なんか持ってくか?」


「来てそうそうアレだけど」と苦笑するロクちゃん。

ロクちゃんは男ばっか4人兄弟の末っ子。

BDはお兄さんたちから流れてきた“お宝”で。

それはまさに、男子中高生の“宝の山”だった。


「中学んときは俺んちに集まって鑑賞会とかしたことあったよなぁ」

「あったね」

「秋山(あきやま)が盛大に鼻血出したの覚えてるか?」

「もちろん」


バカで痛くて情けない、中学時代の楽しい思い出。


「で、持ってく?」

「いや、やめとく」

「まじで? ホントにいいのか? 適当なの持ってかなくて」

「うん?」

「いや、教材いらねえのかなぁと思ってさ」

「ちょっ……ロクちゃんっ!」


僕は飲んでいた烏龍茶を吹きそうになった。


「もうヤっちゃったとか?」


(やぶからぼうに、なんてこと言うんだよっ)


「ヤ……してないよ!」

「あー、まあそうだろうな」


(そうだろうなって何だよ、もう……)


「だいだいさ、教材なんて言うけど、あんなの真に受けて参考にしたら痛い目に合って、女の子を不幸にするだけだろ?」

「そりゃ正しい認識だな」


ロクちゃんはコーラを片手にカラカラと笑った。

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