Fairy
それにしても、桜翅はどうやってここまでやってくるのだろうか。
あの真っ白な髪は、晴雷さんと同じように黒くして来るのか、それともウェイターなどに紛れ込んでいるのか。
…素人の私が、プロの殺し屋を、だなんて。
『 …焦らなくていいから。 』
「 え? 」
『 色々焦ってるんだろうけど、焦ったところで状況は悪化するだけ。落ち着いて真似すれば大丈夫だよ。 』
そんな私に声をかけたのは、狂盛さん。
視線は窓の外を向いたままだったけれど、その声は他でもない私にかけられていた。
『 真似…ね。 』
そんな彼の言葉を聞いた游鬼さんは、繰り返すようにして " 真似 " という言葉を呟いた。
パーティ会場はとても大きなところで、ナイトプールとは違って上品な大人の人達が集まるようなところだった。
少し離れたところに車を止めて、三人が視線だけで私を送り出す。その視線に送り出された私は、一人で車から降りてパーティ会場へ向かった。
事前に渡されていた招待状を手に、なんなく中へと入っていく。綺麗な会場の中には、私とは違った大人の人達で溢れ返っていた。
《 その場に浮かないように、お酒を貰って。飲まなくてもいいから、それを片手に場に溶け込むんだ。 》
すると、無線から晴雷さんの声が聞こえる。
私はその言う通りにして、ウェイターの男性からグラスを受け取った。
周りを見渡すけれど、今のところ桜翅らしき男は見当たらない。
カメラの映像を見ているのか、無線からは游鬼さんの声で『 いないね〜。 』なんて聞こえた。
このパーティの主催は渢さん。ここはちゃんと挨拶に行かないと、周りにも変に思われるかもしれない。