明日は明日の恋をする
社長にお姫様抱っこをされたまま、私はマンションの一室に連れて行かれた。

部屋の中に入ると、社長は大きなソファの上に私を下ろし奥の部屋から救急箱を持ってきた。その箱を無言で男性に渡し、社長はまた奥の部屋へ戻る。

何故、救急箱?と思ったが、なんだか靴擦れのような足の痛さを感じた。社長は私を抱きかかえた時に足の異変に気付いたようだ。その観察力は流石だなと密かに思う。

「水沢さん、パンスト脱いで貰って良いですか?それとも私が脱がせましょうか?」

「じ、自分で脱ぎます。…後ろを向いててもらっていいですか?」

社長に渡された救急箱を持って男性は私の元へやってきた。慌ててパンストを脱ぐ私に男性は後ろを向きながらクスクス笑っている。

「あ~血が出てますね。消毒しましょう。少ししみますけど我慢して下さいね。」

男性はまずソファに座る私の右足を手に取り怪我している部分の消毒を始めた。慣れないヒールで歩いたのと義雄を見つけて走ったせいで、自分でも気がつかなかったが靴擦れをおこし血が出ていた。

それにしても治療とはいえ、男性に足を持たれるのはかなり恥ずかしい。私は赤面しながら治療が終わるのを待った。

「よし、これでお終いです。大丈夫ですか?しみませんでした?」

「は、はい。大丈夫です。ありがとうございました。えっと…」

そういえばこの男性の名前をまだ聞いてなかった。今更聞いて良いものか悩んでいると、男性は私が何か聞きたそうにしているのに気づいたようだ。

「そういえばまだ名前を言ってませんでしたね。私は高瀬(たかせ) 直人(なおと)と申します。社長の専属秘書を務めております。以後お見知り置きを。」

「高瀬さん、あの…私はこのマンションで何のお仕事をするんですか?」

「ハウスキーパーの仕事です。この家の住人は忙しいですからね。家の事を頼みたいんですよ。」

高瀬さんは救急箱の片付けをしながら、私の質問に笑顔で答えてくれた。

「この家の住人って・・?」
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